漫画「(有)斉木ゴルフ製作所物語 プライド」の感想

作・千葉俊彦、画・那須輝一郎。

2017年~2018年秋田書店発行。10巻完結。

 

めっちゃよかった。

ざっくりしたあらすじとしては、契約をすべて切られた女子プロゴルファー・荒木ジュンが、千葉の地クラブメーカー・斉木ゴルフ製作所と契約して成長していく。ゴルファーと中小企業のサクセスストーリー。

 

プロフェッショナルとはジャンル問わず職人である。一流の職人は道具について知り尽くしてこそ、いい仕事ができる。道具を作る職人だけでなく、ゴルファーも職人。仕事において自分の使う道具を理解することの大切さに重点を置いて描かれているので、仕事をしている社会人ならだれもが胸を打たれると思う。読みながら、ゴルフだけでなく自分の仕事にも真摯に向き合おうという気持ちになれてすごい。

 

最近ゴルフでも始めてみようかなと思い、導入として1番最初に読み始めたのがこの漫画。最低限のゴルフ知識がある人に向けて書かれているので、まったくの初心者が初めに読む漫画ではなかったかもしれない。

 

ゴルフにおける道具に順に焦点が当たっていく。アイアン→グリップ→ボール→ドライバー(シャフト)→シューズ→パター→グローブ→キャディ(人)と道具についていろいろやってきた最後に、一番近くで行動を共にするキャディの大切さが取り上げられているところが人情味があって熱い。キャディまで道具というと物扱いしているようで誤解が生まれそうだが、ともに働く人の能力や人間性によりパフォーマンスが変わるのは誰しもが理解している点だと思う。

 

女子プロの話なので当然女性キャラがたくさん出てくるが、全ての女性キャラの描き方にも好感がもてた。読んでいてストレスのない漫画。

 

この漫画の中で好きなのは、技術者がジュンのクラブを見ただけでライ角が60°だと当てたり、テレビでジュンの試合を観ていただけでグリップの滑りを見抜いたりとプロならではの目線で確かな実力を感じさせるパートがたくさんあるところ。かっこよすぎて痺れるし憧れる。

 

終わり方は綺麗だけど、えっ?!もう終わり?!となる。盛り上がりの波が、作中の他の試合の熱量とあまり変わらずな印象なので若干不完全燃焼。でもトータルで見るとめっちゃいい。もう少し後で、ゴルフの最低知識が身についた頃にまた読み返したい。

 

以上。