童謡集「明るい方へ」の感想

著者・金子みすゞ、選者・矢崎節男、発行所:JULA出版局

第一版発行日1995年3月10日

 

金子みすゞの童謡が素晴らしいのはもちろんのこと、選者・矢崎節男の後書きにも心打たれる。

「美しいこと、あるいは美しい行為は、美しい行為を生むのでしょう」

本を読むとき、映画を観るとき、美術館に行くとき、それ以外も、毎日の生活を思い返して、ああ本当だと思う言葉。そのために私は本を、詩を読みたくなるのかもしれない。

 

後書きでは美しい行為が美しい行為を生むことをうたっているとして「草原の夜」の童謡を挙げ、この詩を読むとそのことが信じられて幸せな気持ちになると言っている。それを読んで私もまた幸せな気持ちになる。

 

またそれに関連して書かれている、クラスでいじめがあった担任の先生も興味深い。先生が毎日5分、終わりの会で金子みすゞの童謡を童謡集の中から一編ずつ読み聞かせ、先生の感じたことを話していったところ、いじめがなくなった。みすゞの童謡がいじめをなくしたと断言はできないかもしれないが、そう思いたいと書いていた先生の話。

みすゞの童謡にはその力があると、この童謡集を読んだ誰もが思わずにはいられないだろう。

 

矢崎節男は「みすゞの詩は読む人の心を浄化する」と書いている。私も、みすゞに限らず良い詩を読んだ後は心が洗われた感覚になるので、本当にそうですよねと首が取れそうになりながら後書きを読んでいた。この童謡集を読みながらボロボロに泣いている。前作の童謡集「わたしと小鳥とすずと」を読んでいた時もボロボロに泣いていた。

 

童謡集「わたしと小鳥とすずと」の方が、世間で有名な童謡がたくさん載っている。タイトルになっている「わたしと小鳥とすずと」はもちろん、海の魚はかわいそうから始まる「お魚」、朝焼け小焼けだの「大漁」、見えぬけれどもあるんだよの「星とたんぽぽ」、テレビCMにもなっていた「こだまでしょうか」など。何回も聞いたことがあって知っているのに読むたび毎回新しい。良い詩はなぜか毎回新しい。

 

この童謡集「明るい方へ」の中で特に好きなのは「灰」と「空のこい」。SNS疲れの心に沁み入る。

 

以上。